0.HP版の前書き 樹液に集まるチャイロスズメバチに向かい
前肢を振り上げて威嚇するオオスズメバチ ![]() いささか不真面目な演題に思えますが、「どうすれば刺されるか」を知ることで、「どうすれば刺されないか」 を知る という内容です。 途中、「いきなり参考資料」というのが、たびたび出てきますが、本題から少し外れた内容なので、その部分は流してお読みください。 1.はじめに 一般の人はともかく、野外で昆虫を追いかけるムシ屋は、蜂に刺されることも多いのではないかと思います。 しかし、実は思いのほか刺さないものでもあります。思い出してみてください。アシナガバチ、スズメバチ以外の蜂に刺されたことがありますか?そもそも人 を刺すほどの針を持たない蜂も多いのです。 あなたの健康を損なうおそれがあります。
スズメバチを手に乗せるのはやめましょう ![]() しかし危険な蜂がいるのも確かです。 「樹液でオオムラサキを採るときは、まずスズメバチを全部やっつけてから蝶が飛んでくるのを待つ」という話も聞いたことがあります。実はちょっと危ないん ですが。 今回は、正しく刺されてしまうと命に関わる事もあるスズメバチを中心に「正しく刺される」方法をお話したいと思います。逆に言えば、こうしなければ、あ まりハチを刺激しない ということになります。 2.刺す蜂・刺さない蜂 18上科に分類されるハチのうち、刺すのは3上科(カリバチ・ハナバチ)だけ。 さらに、オスは刺しません。というのも、針は産卵管由来の器官なのです。
3.刺されると危険な蜂 毒を持っているのは、カリバチ類とハナバチ類。 大きく分けると、「ハナバチ」と「カリバチ」で毒が違います。 アレルギーを持っているヒトには、いずれかの蜂が危険かもしれません。 蜂によって抗原が違うので、「どの蜂毒のアレルギーか」により危険な蜂が違います。 「スズメバチに何度刺されても腫れるだけ。でもミツバチに刺されるとジンマシンが出る」という人もいます。 アレルギーも、個人差、体調により強度が違い、「痒み」「ジンマシン」「めまい」「心悸高進」「昏睡」「ショック〜死亡」など、現れる症状が変わりま す。 アレルギーが現れるのは、抗体ができた2回以降です。 1回刺されたことがあり、「アレルギーが怖い!」場合はハチ毒のパッチテストをしてみるといいでしょう。 特に攻撃性の強いスズメバチによる死者数は年間50人ほど。季節は7月〜10月に集中します。 4.「刺す蜂」の「危険の度合い」による分類
5.アシナガバチ・スズメバチの「警戒範囲」 いかに凶暴なスズメバチといえども、めったやたらに攻撃するわけではありません。 「刺す」というのは防衛行動なのです。 ・何かに驚いた時 ・巣 に近づくものがあるとき ・餌場に近づくものがあるとき(オオスズメバチ)
しかし、巣や餌場に近づくときは注意が必要です。すでに興奮している蜂がいないとも限りません。 6.どうすれば蜂に刺されるか...本題です ◆「刺す蜂一般」の場合 ・ 指でつまむ ・ 衣服の中に巻き込む ・ 上に座る ◆「アシナガバチ」「スズメバチ」の場合 ・ 巣を刺激する(振動を与える) ・ 「警戒範囲」の内側で素早く動く ◆「オオスズメバチ」の場合 ・ 巣を刺激する(振動を与える) ・ 「警戒範囲」の内側で素早く動く + ・ ゆっくりと巣に近づく(2m) ・ 餌場の近く(「警戒範囲」)で素早く動く 7.スズメバチ:「警告」から「攻撃」へ 「警戒範囲」の内側で観察していると、じっとしていても、「警告」されることがあります。 1. 大顎で「カチカチッ」という音をたてる 2. 目標に顔を向けたまま、左右に円弧を描いて飛ぶ(視差により対象までの距離を正確に測る) 「警告」を無視すると「攻撃」に移ります。 1. 腹を「つ」の字型に前に突き出して、毒針で体当たり! 2. 目標にしがみつく 3. 目標に大顎で噛み付く 4. 噛み付いたまま毒針で刺しまくる 「攻撃」を受けたくない場合は、ゆっくりと後退して「警戒範囲」から脱出しましょう。 巣の近くで、うかつに手で払ったりすると、「警報フェロモン」を発して、総攻撃を受けるかもしれません。 8.警報フェロモン スズメバチから「攻撃」を受けた時、アミで掬ってしまう方法もありますが、巣の近くなど、仲間が近くにいる時は警報フェロモン(毒液スプレー)を発して いる場合があるので、注意が必要です。 警報フェロモンを受けた個体は、「警告」せずに「攻撃」してくるので、掬った場合、一旦後退して様子を見ましょう。 樹液で蝶を採集する時、「先にスズメバチを潰してしまう」という方も、潰すことにより警報フェロモンが拡散する恐れがあるので注意が必要です。目標の木 から離れたところで潰しましょう。足の裏にも気をつけて。 9.興奮したスズメバチをより興奮させる要因 ・動く黒いもの 頭髪、眉毛、瞳、カメラなどに毒針を前に向けて突っ込んできます。 ・素早い横の動き 昆虫は動くものしか認識できません。特に素早い横の動きに敏感に反応します。 ・整髪量などに含まれる成分 ハチは匂いに敏感です。香水や整髪量に含まれる揮発性の成分や、塗りたてのペンキに含まれる揮発剤に刺激されます。 10.危険な時期 巣が大きくなり、新女王の育成が始まる頃から、巣を守る蜂は敏感になります。 7月半ばから10月頃がもっとも危険な時期です。 11.スズメバチに刺されたら ・巣や餌場からまっすぐ10m以上離れる(横の動きは危険) ・爪ではじき落とす(手で払うと、手にしがみつき、刺される)―――1頭の場合 ・物で払い落とす―――複数頭の場合 ・踏み潰し、移動する ・医者に行って、痛い注射を打ってもらう 腫れや、刺された跡の肉が溶けてえぐれるのを予防できます
草間岳彦
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